ルアりずむ

主にソルトウォーターのルアー釣りを嗜んでいます。タックルやルアーのインプレ レビューをメインで綴っていきたいと思います。ちなみにボウズが多いので、そのレベルだとお察しの上、参考にしてくだされば幸いです。

オリムピック 17スーパーカラマレッティーAT S892MLM インプレ

迷った挙げ句、結局買ったのがスーパーカラマレッティーAT892MLMです。
恐らく、エギングロッドの価格だけなら最高峰のロッドです。
不注意で#2を粉砕してしまったので涙の強制インプレです。

OLYMPIC SUPERCALAMARETTI AT GSCS-892MLM-AT


全長:2.67m
パワー:M-Light/M
アクション:R-Fast
ウェイト(g):(98)
仕舞寸法(cm):136.5
エギ(号):2-3.5
PEライン(号):0.4-1.0

定価154000円(税込)のロッドです。
アユ竿やクエ竿、高級投げ竿と比較しても、1g当たりの単価が恐らく最高値のロッドでしょう。
その価格を押し上げている要素が、オートクレーブ製法という航空機のカーボンに使われている製造方法に起因します。
カーボンの質を上げることで強度が増した、というテクノロジーですが、筆者は車の座席シートを使ったテコの原理で破壊しました。

断面的にはそれほど薄くした形跡はなく悪くない感じです。
骨でも折れた状況だっただけに致し方なし。

比較対象は購入検討に使ったカラマレッティープロトタイプDue892MLと16スーパーカラマレッティー872MLをメインに、カラマレッティーエサゴナーレ902ML-S、スキッドロウ スラックマスター86L、スペシメン88swingtop、セフィアエクスチューン86Lなどです。

www.lurelism.com
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仕様

自重
98gです。
レングスを考慮すれば軽量なロッドですが、価格まで込みで考えると、それほど軽量化には拘ったロッドではないことがわかります。
16スーパーカラマレッティー同様、以前までの派手な装飾が排除されています。

一応、ガイドラッピングのスレッドとエポキシ量を抑えようとした努力は垣間見えます。

ガイド
チタンフレーム、トルザイトリングのKガイドになります。


KRコンセプトが採用されており、ラインの抜け感や使用感に関しては今更語るまでもなく優れています。

逆にここで差別化できるダイワとシマノは強い、と感じてしまう部分です。

継ぎ
印籠継ぎが採用されています。

16スーパーカラマレッティーと同じく控え目に補強が施されています。

グリップ

VSSリールシートです。
性能に関しては不満点はありませんが、特別感もないのが事実です。

ですが、次の25スーパーカラマレッティーATからは独自のカーボンリールシートが採用されています。
この変更は期待できる部分でしょう。

グリップはセパレートグリップが採用されています。

エンドグリップには控え目な装飾が施されています。

ブランクス

オートクレーブ製法以外の部分は16スーパーカラマレッティーと同じテクノロジーとなっています。

オートクレーブ製法
恐らく、このロッドを高額にしている最大の要因がこのオートクレーブ製法です。

ボーイングのカーボンに使われるテクノロジーと言われたらビビってしまいます。
難しすぎてよくわかりませんが、特殊な工程を挟むことでカーボンの高品質化、高純度化、安定した強度が実現したとのこと。

認識としては同じカーボン量ならより強度が増したロッドが作れるテクノロジー、ということなのでしょう。
結果、強度が増した分、カーボン量を減らして軽量化、というロッドあるあるな使い方をしているようです。

トレカT1100G
M40Xの登場以降は微妙な立ち位置になってしまったT1100Gが採用されています。
30t以上で強度が低下するというカーボン繊維の特徴を、33tまで引き上げたのがトレカT1100Gとのことです。

25スーパーカラマレッティーATではトレカM46Xが採用されるとのことで、弾性率のインフレには結果的に置いていかれたロッドだと言えます。

必ずしも高弾性ロッドがエギングロッドに適しているとは言えませんが、リミテッドモデル的なポジションであることを考えれば、汎用性よりも尖った要素が求められているので、少し時代に置いていかれた感じが否めませんが、次のモデルで更新するようです。

ナノアロイ
今ではお馴染みのテクノロジーです。

カーボン繊維をつなぎ合わせるレジンに、粘る素材が使われ破断強度がアップした、というものです。

G-MAPS

オリムピックではお馴染み、シマノのスパイラルXやダイワのX45にあたるブランクス構造です。
異なる方向のカーボンシートを重ねて潰れ剛性と捻れ剛性を強化しているとのこと。

ブランクスの構造に関する技術です。

クワトログラファイトクロスXX

立体的にカーボンが織り込まれた立体的な4軸カーボンです。
6軸組布のエサゴナーレグラファイトクロスの後継技術にあたります。

ロッドをカーボンシートで外部から補強する技術で、曲げや捻れに貢献しているとのこと。

これが#2全体に覆われています。

残念ながら、25モデルからは消滅してしまっています。
効果はあるかどうかはともかく、他のメーカーにはない外層補強で独自性を出していたので、この路線方向がどう転ぶかは今後気になる要素です。

4軸カーボン信者にとっては、その上位互換的な存在である6軸カーボンや立体体な4軸カーボンの宣伝効果は絶大だといえるでしょう。
オリムピックはその層を狙い打ちにしていたと思ったいたので、かなり意外な路線変更でした。

そもそも外層補強の効果を信用していない層は、それを購入検討の要素には全く含めないので、スーパークワトログラファイトクロスLVで全身を包む仕様はどの層にも刺さらない可能性があり、若干リスクがある方向転換だといえます。

ただ、破損した断面を見たところ、思ったより最外層のクワトログラファイトクロスXXは厚いので、軽量化の観点ではかなりの足枷になっていたのかもしれません。

スーパークワトログラファイトクロス

俗に言う4軸カーボンです。
これが#1に採用されています。

25スーパーカラマレッティーからは、これを更に軽量化した(薄くした?)スーパークワトログラファイトクロスLVが採用されています。

ジョイント部分でスーパークワトログラファイトクロスXXとスーパークワトログラファイトクロスが別れています。

テーパー
レギュラーファストテーパーです。
ベリーまで柔らかいため、ファストテーパーだった16スーパーカラマレッティー872MLよりも、使用感がマイルドに感じられます。

使用感

飛距離
8.9ftのロングレングスにより飛距離の出しやすいロッドです。
エギ3.0号、3.5号、4.0号、いずれも安定した飛距離が出せます。
また、20gのルアーであればかなりの飛距離を叩き出せます。
意外と5gのルアーのキャストも安定します。

レギュラーファストテーパーで、ブランクスの反発力も絶妙なため、速いスイングスピードで打ち出しても、ゆったりしたキャストで投げても安定した飛距離が出ます。

程よい反発力により、似たような仕様のカラマレッティーDue892MLよりも振り抜きやすく、キャストしやすいロッドになっています。
キャストに関してダルさやブレを感じることがなく、Due892MLと比較することで良さのわかるロッドです。

感度
オートクレーブ製法とその価格から見ると圧倒的な超感度がありそうなロッドですが、ぶっちゃけそんなことはありません。

カラマレッティープロトタイプDue892MLと比較すると、振動の伝達率が上がっていると感じますが、8.9ftのロッドということもあり他の8.6~8.8ft旧のロッドと比較して優れているという要素は少ないです。

そもそもパリパリ高感度なロッドではありません。
ストイストRT88MLの方が振動の伝達力は上だと感じます。

色々な要素がありますが、そもそものコンセプト、8.9ftのMLMパワー、ティップMLのバットMクラスというコンセプトが大きく影響しています。

バットをMクラスにしたせいで、シャープさがありません。
(それでもDueよりはましですが)
それにより、ややごつ目のロッドというイメージは払拭できていません。
スペック重量だけなら100gを切っていますが、実釣ではロングレングス故に軽量な使用感ではありせん。
クラスを感じさせない軽快な使用感は体現できていない印象です。

しゃくり感
しゃくり感に関してはバットの主張は少なく、ティップ~ベリーの反発力を使って楽にしゃくれます。

ベリーから強く硬いしゃくり感の16スーパーカラマレッティー872MLや、ティップ~ベリーがほぼ無抵抗なのに硬いバッドで一気に負荷の来るスペシメン88swingtopと異なり、ティップ、ベリー、バッドと負荷がスムーズに移動するので比較的楽にしゃくれます。
これがカラマレッティープロトタイプDue892MLだとブランクスの戻りがアシストとして機能しないため、自力でロッドを復元させる感じになり非常に疲れます。
その点、レングスの割には楽にジャークできるのがかなりの魅力です。

更に、速いショートピッチも、ロングジャークもどちらもこなせるロッドです。
ベリーの役割が絶妙で、こちらのしゃくりに対してアシストしてくれるので、しゃくり自体は楽なイメージです。

また、3.0号、3.5号、そのどちらも使用感にそれほど大きな影響を与えることなくジャークできます。
スペック外ですが4.0号も一応、ベリー~バッドを使ってジャーク可能です。
エギサイズを変更しても、使用者がそのサイズに合わせてしゃくり方やキャストを変更しなくてもいい、というのは地味ですが有難い要素です。

ただ、長時間しゃくるのにはそれほど向いていません。
結局、8.9ftというロングレングスと、シャープではないMクラスのバッドにより、体感で軽いロッドとはいえない操作性になっているからです。
8.8ftのスペシメンやストイストRTはどちらかというと8.6ftに近い使用感で使えるロッドです。
ただ、この17スーパーカラマレッティーATは8.9ftでありながら、Mクラスバッドにしたせいで、8.11ftや9ftの方に近い使用感に感じられます。(もちろん、Due892MLも9ftよりです)
シャープさと振り抜きの良さだけなら、バッドの細いスーパーカラマレッティーエサゴナーレ902ML-Sの方が上になってしまっています。

結果、ジャークしやすいロッドですが、ロングレングスとシャープさが足りていないので後々疲れてくるロッドになってしまっています。

ただ、なんだかんだで1日しゃくるのは大丈夫です。(これがDue892MLだと疲労感が強く厳しい)
それが無理だったのはセフィアエクスチューン908MHやセフィアSS900MHでした。

操作性

ロッドパワー
8.9ftのロングレングスとMクラスバットによりパワーは非常に高いロッドです。
アオリイカに関しては論じるまでもなく、エギングついでにサゴシやサワラクラス、メジロなどを地磯から釣るのにも重宝します。

意外にもベリーがアタリを弾きにくく、バッドもカチカチではなく程よく曲がるため、青物の突っ込みを吸収していなしてくれます。
無駄な反発がないため、フックアウトやラインブレイクの心配もありません。
あと、ロングレングスが地磯でのランディングや手前の障害物回避に一役買ってくれます。
春シーズンのマイクロベイトパターンでの使用感はピカ一です。

ただ、エギングついでにルアーを投げて青物釣って喜んでいる筆者のようなエギンガーは少数だといえます。
そう考えると、892MLMというスペックが一体、どの層に需要があるのかは最大の疑問です。

ATシリーズから2番手展開するとして、862Mはわかりますが、どうしてもう1本が892MLMになったのか、正直謎な部分でしょう。

MLユーザーの大半がシャローエリアをメインにしていると思われます。
筆者もそうで、例えフィールドがディープであっても、月夜の表層狙いなど、飽くまで探る部分はシャローです。
そう考えると、Mクラスのバッドはややオーバースペックで、かといって、それでディープエリアで重いエギをキビキビ動かせるかといえばそうではないため、シャローで使う人のメリットはほとんどありません。

最初に上げた通り、青物も狙うのであれば非常に重宝しますし、最高のロッドだといえますが、そうでないなら、どういうフィールドでどのシチュエーションで使うのかがわかりにくいロッドです。
結局、柔らかいロッドを求めている人に対しては、Mクラスバッドは蛇足になってしまっています。

ファイト感
バットがMクラス表記で固そうですが、実際は高負荷時にはしっかりと曲がって負荷をかけてくれます。
これに関してはエギングロッド全般に言えることかもしれませんが、ロッド全体を使ってファイトできるため、フックアウトのリスクは少なく安定したファイトが楽しめます。
これがシーバスロッドだとリーダーのフロロ2号が先にブレイクするリスクがあります。
エギングの細糸ラインシステムで青物と闘えるのが最大の強みです。

ロングレングスなこともあり、パワーファイトではロッド全体を使って衝撃を吸収できるのでバラシにくいです。

イカに関してもバッドに余力があるので、後はドラグ調整で負荷をどこまでかけるか、だけのファイトです。
曲がるバッドなので見切れのリスクは少なく、安心したファイトが可能です。

総評

エギング青物兼用ロッドとしては素晴らしいロッドです。
その特性から考えても地磯での使用で光るロッドです。

結局、このロッドの評価はその余りにも高額な価格をどう評価するか、でしょう。
ロッドとしては間違いなく良いですが、154000円という価格の正統性が本当にあるのかどうか、に尽きると思います。
カラマレッティープロトタイプDue892MLと比較すれば全ての性能で大きく上回っていますが、それだけなら8万円台のスーパーカラマレッティーシリーズで良かったといえます。
ど真ん中の比較対象がDueくらいしかなく
評価し辛いため、ATの862Mを使った人の方が、このシリーズの是非がわかるでしょう。

結論を言うと、筆者は16スーパーカラマレッティー872MLの方が好きなので、ロッドの好みは技術や素材の価値より優先される、ということなのでしょう。

オートクレーブ製法の最大のメリットが強度だと考えれば、使用感に関してその変化を感じ取るのは正直難しいでしょう。
よって、数量限定の限定モデル、リミテッドモデル的な立ち位置のロッドです。

後続の25カラマレッティーATでは862Mのみがラインナップされています。
今後追加機種があったとしても892MLMで出る可能性は微妙です。

なので、カラマレッティープロトタイプ892L/MLが事実上の最新版となります。